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第10章 インフルエンザ 3/6

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-11 18:00:47
「……」

「気がついたかい、少年」

「え……」

 見知らぬ女が、そう言って自分を見つめていた。

 * * *

 悠人〈ゆうと〉がぼんやりとした頭で、状況を把握しようとする。

 自分の部屋の天井が見える。と言うことは、ここは俺の家だ。

 左手が動かしづらい。その上にあるものを見て納得する。どうやら点滴をされているようだった。

 そうだ。俺、急に吐き気がして……トイレで吐いて……

「小鳥〈ことり〉は!」

「君の隣だよ」

 女がそう言った。

 頭を動かすと、自分の手を握って眠る小鳥が目に入った。悠人がほっとした様子で微笑む。

 小鳥の頬には、涙の跡が幾筋も残っていた。

 まだぼんやりしていた。目が回り、息が熱い。

「タオルを変えよう」

 女がそう言って額のタオルを取り、台所に歩いていった。

「……すいません、その……お世話になったみたいで……」

「気にすることはない。これも何かの縁だろう」

 タオルを絞って戻ってきた女が、悠人の額にそっと乗せた。

「あの、それで……」

「私は深雪、木之本深雪〈きのもと・みゆき〉だ。ここの下の住人だ」

 そう言われて悠人は、見覚えがあることを思い出した。何度かエレベーターで一緒になっていた。

「しかし驚いたよ。エレベーターに乗ろうとしたら、中に少女がいた。見たら小鳥くんだ。ああ、小鳥くんとは以前、そこの堤防で会ってるんだ。

 小鳥くん、様子が尋常じゃなかった。泣きながら私の顔を見て、しがみついてきた。混乱している小鳥くんに困っていたら、小鳥くんの後にいた金髪少女が説明をしてくれた。沙耶〈さや〉くん……だったね。彼女の話で、君が嘔吐したままトイレから出てこないと言うことが分かった。

 申し訳なかったが部屋に入らせてもらい、トイレの扉をこじ開けさせてもらった」

「こじ開けた……」

「ああ。鍵がかかっていたからね、悪いが破壊した。恐らく君は、彼女たちに情けない姿を見せたくないと思い、無意識に鍵をかけたんだろう。しかしこんな時に鍵をかけるのは、無謀だぞ」

「ははっ……」

「とにかく開けると、君は便器を抱えたまま気を失っていた。その君を布団に運ぶのには往生したよ。小鳥くんは混乱して、泣きながら君から離れない。熱を測ったら39度越えだ。すぐに近所の医者に電話をして、来てもらった訳なんだが……おめでとう。季節外れのインフルエンザだそうだ」

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